電車でお年寄りが立っていたとき、
一人の若者が明らかに落ち着きをなくし、迷っている様子だった。
譲ろうとしているのだと、すぐに分かった。
何度も足を動かしかけ、けれど立てなかった。
結局、隣の別の人が席を譲った。
その若者は、静かに目を伏せた。
多くの人は何も気づかないだろう。
彼は「譲らなかった人」として、そのまま忘れられていく。
でも、僕には分かった。
彼の中には、確かに“譲りたい”という愛があった。
—
◆ 結局できなかった、けれどそれでも
人は結果で人を測る。
けれど、僕はあの一瞬の葛藤を見ていた。
ほんの少しの勇気が足りなかっただけ。
それでも、心には間違いなく“優しさ”が宿っていた。
それは、確かに存在した愛だ。
—
◆ 僕が見届けたもの
彼がその日、誰かに優しく見られることはなかったかもしれない。
でも、僕は見た。
そして知っている。
彼の中にあったその愛は、行動にならなかったとしても、美しかった。
そしてなにより、彼自身が一番知っている。愛はあったのに行動に移せなかった悔しさを。
行動にならなかった愛について
〜誰にも見えなかったけれど、僕は見ていた〜

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