今日、ラーメン屋で印象的な出来事がありました。
年末で、店内はそこそこ忙しそうでした。
給仕係も明らかに人手が足りていない様子です。
そんな中、ひとりの青年店員の所作が、自然と目に留まりました。
厨房からの一言
僕は白いロングTシャツを着て席に座っていました。
すると彼は、厨房にいながら、少し離れた客席の僕に向かって、
「紙エプロンはご利用ですか?」
と声をかけてくれました。
給仕係が足りていない状況で、
本来なら厨房に専念していても不思議ではありません。
それでも彼は、
客席を見渡し
服装という細部に気づき
今聞かなければ意味がないと判断し
迷いなく声をかけてきました。
この時点で、
「この人は、人を見て仕事をしているな」
と感じました。
ラーメンを運んできた理由
しばらくして、彼は厨房から直接、ラーメンを運んできました。
給仕係が足りていない中で、
「少しでも冷めないように」という意図が、所作から伝わってきました。
先ほどの一言と、この行動が、自然につながった瞬間でした。
だから僕は、こう伝えました。
「あなたの接客は素晴らしいです。
おかげで、こちらも元気をもらえました。」
特別なことを言おうとしたわけではありません。
ただ、そう感じたので、そう言っただけです。
見送りの場面で
食事を終え、席を立ったときのことです。
彼は店の扉を開け、
半袖のまま(12月です)、外にまで出てきて、
僕と彼女を見送ってくれました。
忙しい時間帯ですし、
業務として必須の行動ではありません。
それでも彼は、外に出てきました。
そこで改めて感謝を伝え合い、
こんな言葉を交わしました。
「あなたのおかげで、
食べる前から美味しく感じましたし、
食べたら、もっと美味しかったです。
初めて来た店ですが、
また来たいと思いました。」
彼は、少し照れたように、でもとても嬉しそうでした。
何が残ったのか
店を出たあと、
彼女がとても嬉しそうにしているのが印象的でした。
たった1000円のラーメンなのに、
ずいぶん気持ちの良い時間を過ごしたね、
そんな空気が自然に流れていました。
振り返ってみると、
誰かが無理をしたわけでも、
特別なことをしたわけでもありません。
彼は、自分の仕事を丁寧にしていただけ。
僕は、感じたことを言葉にしただけ。
彼女は、ただ隣で食事をしていただけ。
それでも、
三人とも少しだけ気持ちが明るくなった。
そんな出来事でした。
またあの店に行くことがあれば、
きっと同じ青年に会えたらいいな、
そのくらいの、静かな余韻が残っています。
たった1000円のラーメン屋で起きた、
小さくて、でも確かに美しい出来事の記録です。

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