菊池信之介×ひろゆき対談 ― 学問的誠実さとエンタメのミスマッチ

先日、YouTubeで経済学者の菊池信之介氏と、ひろゆき氏の対談を視聴した。
結論から言えば、番組としては0点、しかし学者としての誠実さは満点。
そんな不思議な時間だった。




終始なごやかな対談

まず印象的だったのは、二人の雰囲気が終始なごやかだったことだ。
対立や舌戦はなく、穏やかなやりとりが続く。
普通に考えれば“平和で良いこと”なのだが、ことYouTube対談となると少々物足りなさを感じざるを得なかった。




菊池氏のスタンス ― 誠実すぎる頭脳

菊池氏は経歴通り、間違いなく最高レベルの頭脳を持つ人物だ。
そのため、彼の発言は常に「断定を避ける」という学者的誠実さに貫かれていた。

「断言できない」

「まだ研究中」

「分からない」


こうした言葉が繰り返されるのは、決して逃げではない。
むしろ、学者としての正しい態度であり、誠実さそのものだ。




しかし、エンタメとしては機能せず

ところが、相手は「論破王」として知られるひろゆき氏だ。
彼の持ち味は、相手の断定を突き、その矛盾を切り崩すこと。

にもかかわらず、菊池氏は断定しない。
「9割以上の確率でも断定できない」と言い切った瞬間、ひろゆき氏の武器は封じられた。
攻撃する隙がなくなり、議論は深掘りされないまま幕を閉じてしまった。

結果的に、視聴者が期待していた「刺激的な討論番組」にはならなかったのだ。




ミスマッチの象徴

ここで強調したいのは、これは菊池氏を責める話ではない、ということ。
彼は誠実であるがゆえに断定を避け、学者としての姿勢を貫いた。
むしろそこに彼の賢さと美徳がある。

問題はキャスティングの側にあったのだろう。
もしも番組として面白さを優先するなら、

断定を繰り返す極論派

それを突き崩すひろゆき氏


という構図がベストだった。

逆に「学問をじっくり聞く番組」にするなら、
ひろゆき氏ではなく、画面を華やかにする女性インタビュアーなどが隣に座り、素朴な質問を投げかける方が有意義だったはずだ。




まとめ

今回の対談は、学者の誠実さとエンタメの面白さがかみ合わなかった典型例だ。
菊池氏は「学者としては百点満点」、だが「番組出演者としては不完全燃焼」に終わった。

それでも私は、菊池氏の誠実さそのものに強い敬意を抱いている。
ただ一方で、「討論番組」として見た場合には、やはり大きなミスマッチを感じずにはいられなかった。

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