「あなたの家には5000本のDVDがあるとして──今日、観ますか?」

想像してみてください。
あなたの家には、いつでも見られる映画のDVDが5000作品並んでいます。
さあ、今日その中の1本を観るでしょうか?

……おそらく、多くの人は観ません。
なぜなら、「いつでも観られる」と思った瞬間に、
その価値は消えるからです。

人間は“希少性”にしか心を動かされません。
「いつでもできる」と思った瞬間、
それは永遠に“やらないこと”になるのです。




「では、明日返却予定のDVDが1枚だけあるとしたら?」

そのとき、あなたは観ます。
眠くても、忙しくても、なんとか時間を作って。

つまり、人を動かすのは「価値」ではなく「期限」。
行動を支配するのは、“やりたい”という感情ではなく、
“やらなきゃ”という圧力なのです。

——自由が人を怠惰にし、
 期限が人を動かす。




「得よりも、損を恐れる」──人間の本質

このとき、私たちを動かしているのは、
「観たい」ではなく「損したくない」という心理。

人は5000の得には動かず、
たった1の損に突き動かされる。

400円のレンタル代を“無駄にしたくない”という、
そのわずかな感情が、
私たちの行動を決定しているのです。




しかし、真の恐ろしさはここからです。

もし「損をしたくない」と思い、
見たくもない映画を無理やり観たとしたら──
そのとき、失うのは400円ではありません。

それ以上に尊いもの、
「見たくもない作品を観させられた2時間」
という、二度と戻らない時間です。

損失を回避したつもりで、
実際には命の一部を支払っている。
人は、たいして大切ではないものを守るために、
最も大切なものを失っているのです。




「損を恐れない自由」こそ、究極の贅沢

だから私は、
レンタルしたDVDを観ないまま返すことがよくあります。

なぜなら、
六日前に「観たい」と思った自分と、
今日の自分は、もはや別の人間だからです。

変化した感情に従うことは、
過去を裏切ることではなく、過去を赦すこと。
「もったいない」という言葉に支配されず、
“今の自分”に誠実であること。

——それこそが、真の自由です。




結論

5000の得よりも、1の損を恐れるのが人間。
だが、損を恐れる人間は、
その1の損に行動を縛られ、自由を失う。

本当に自由な人は、
5001の中から、今日観たい1本を選ぶ。
損も得も超えて、
ただ“今の心”に忠実に生きる。

それが、
「自由に生きる」ということではないでしょうか。

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